深海を写す

山下 衿子

作者によるコメント

深海という暗闇の中の世界はどう目に映るのか。深海に生息する生物の姿を、光と色で再現した。自らの目で確認することが困難なその世界は人の想像を無限に掻き立てる。「暗闇と光」そして「写真と光」という2つの必然的な関係に着目し、光そのものをモチーフとして捉え、多重露光と長時間露光を用いて写真に収めた。

担当教員によるコメント

山下さんは針金を使って深海魚を造形し、それを写真に撮りたいと考えた。まず、イラストではなく写真で撮る必然性を考える。造形された深海魚は魅力的、個性的でなければならない。そのための要素としてユーモアの必要性を話す。深海を表現するためには、背景が闇でなければならない。闇の中での奥行きをどう表現するか。写真表現の特徴である質感を意識し、そのための照明を工夫するようアドバイスした。まず闇の中で深海魚が自ら発光しているような照明を探る。光源の種類そのものを考え直す、エフェクトをかける、多重露光するなどの実験を繰り返し、予想以上の高いレベルの作品に到達した。手作業の作品が写真表現によって未来的な深海魚に変貌した。

教授・十文字 美信