夢かもしれない話

朴 美玲

作者によるコメント

事故に遭ったおじいさんが見た走馬灯を舞台としているアニメーションです。この作品ではカエルが頻繁に登場しますが、これは「センポクカンポク」という富山県南砺市に伝わっていた妖怪で、死人の霊を墓場まで案内すると言われています。本作ではこの妖怪に、おじいさんをあの世まで案内してもらいます。全体的に引いたカメラワークを使用しているので、俯瞰的な視点を楽しんで頂けたらと思います。

担当教員によるコメント

卓越した動画力で人物の動きを丹念に描写していく。レンズ効果でパースの歪んだ横長の背景を行き来する人物を自然なカメラワークでフォローし、無駄なカット割を避け強調する箇所以外は1シーン1カットで描くストイックな演出スタイル。その作用で数カ所挿入されるアップサイズのカットがとても効いている。また見せ場で動きだすカメラワークの見事さ。その抑えた演出で描かれているのは人生、家族、伴侶、愛……とベタになりがちなテーマだが、カエルの妖怪の存在を加えることによって、アニメーションならではのユニークで豊かな味わいを見せてくれる。最後の最後まで粘りぬいてやりきったその執念、その想いが作品からにじみでていて、見るたびにその労をねぎらいたくなる傑作である。

准教授・野村 辰寿