狼の杜

太田 麻衣子

作者によるコメント

日本の杜には昔、神が居た。日本に昔から居るとされる神は、色々な側面を持ち合わせている。祟るような荒々しい面、実りや加護をもたらす優しく穏やかな面。人々は古来、自然に存る神と隣り合わせるようにして、素朴な信仰を持ち暮らしてきた。これは、そんな神と人が近しかった頃に起きた出来事を描いた、山犬信仰をモチーフにしたアニメーションです。神と人が、時には交わる事があったのかもしれない、そんな感覚を描きました。

担当教員によるコメント

毛筆調の和風テイストでキッチリ作り込まれた逸品である。セリフこそ無いが的確に物語を紡いでいく演出手腕は見事である。不慮の事故により冥界に迷い込んだ主人公が遭遇する恐怖。和風ホラーテイストをも活かし、現実と冥界の描き方を色調などで区別し、展開のメリハリを上手くつけている。俯瞰やあおり、アップからロングショットまでを見事に使い分けたカット割から、音楽や効果音の使い方といった映像演出が実にしっかりしていて安心して全編を見る事が出来る。さらにこの和風テイストをフルデジタルで仕上げている作者の技量にも驚かされる。降りしきっていた雨が止み、晴れ渡ったラストシーンは、まさに過酷な1年間を費やし作品を完成させた作者の清々しい心境を見るようだ。

准教授・野村 辰寿