終わりのない歌

甫木元 空

担当教員によるコメント

赤ん坊が生まれた。そこから延々と続くホームビデオ。画面の背後には父がいる。画面の背後の父と画面の中の母と子の作る空気は時に微笑ましく、時に平凡。時折挿入される白い部屋の若者たちと子ども。その背後にはじっと目を凝らす誰かがいる。それは多分ホームビデオのあの子だろう。白い部屋の若者が子どもを連れてホームビデオの家に入る。そこには父の遺影。白い部屋が崩れて周りの野原に子どもたちが並び、あの母の作った歌を歌う。映画は世界を記録してはいなかった。過去と今を結びつけ、どこかで見たようでどこでも見ていない世界を生んだ。そして再びのホームビデオに歌が流れる。あの子が今、歌っているのだ。父の愛を引き受ける、それは儀式だ。どこにでもありそうなホームビデオは恥じることなく流れ、顔を上げて語りかけてくる。つながる愛、と言っては陳腐だろうか。

教授・ほしの あきら