鈴木 虎平

担当教員によるコメント

一つのシステムを繰り返す。しかしシステムを繰り返す息苦しさから逃れたいという思いと、脆さを含んだシステムそのものによって、システムには綻びや歪みが生じる。しかし、その綻びや歪みこそがこの世界そのものかもしれず、そう認めたときに世界は一気に拡張し、その認識が知覚の快感にもつながる。掲載図版は「嘴」の部分である。実作品は巨大な紙で、そのため実見しても初めはただぼんやりとしか見えない。よく見れば、白い神経細胞網のようなものが見えてくる。実は作者の記憶のなかの地図だ。地図を石膏で彫り、それを白い絵具で刷る。ずらして刷る。石膏の版はしだいに崩れ、刷られた面は変形しながら拡張する。こうして作者の記憶の地図は、広大な異次元の地図として再生するのだ。

教授・堀 浩哉