懐中土地
川上 亜里子
担当教員によるコメント
旅行に行くと枕が合わなくて眠れないという人がいる。自分の使い慣れた枕じゃないと首に合わないということだ。ではいっそ自分の枕を旅に持参すればいいではないか。最初はそんな発想だったのかもしれない。川上の作る枕の作品は江戸時代の箱枕の形をしている。形は似ているが、本来籾殻などを入れて直接頭に当たるクッション部分を木や砂で作ってある。実はこの木や砂はふるさと北海道のものだ。川上は故郷を持参しながら東京に旅立っていると言える。ではなぜ川上はこんな作品を作るのだろう。単なる望郷の思いだけではあるまい。川上は場所というものが自分のアイデンティティーを作り出すと考えている。風土、言葉、食物、人間関係といった自分を作り出す様々な要素がその場所から得られたものだからだ。さらに1年のうち大半を海の上で過ごす父親への思いや、震災で帰るに帰れない人々への思いもあるのかもしれない。川上の作品にはそういった場所の記憶を蘇らせる力がある。
教授・菊地 武彦
- 作品名懐中土地
- 作家名川上 亜里子
- 作品情報技法・素材:木材、畳、土、砂、アクリル、漆
寸法:H93×W200×D47cm - 学科・専攻・コース
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