Aji, “アジがある”という日本語から着想を得たデザイン

吉川 駿

作者によるコメント

「アジがある」という日本語を思い浮かべる時、その言葉が表すものは、多種多様です。時として、それはアンティークのような古くなったことによる美しさを表すこともあれば、ゲイリー・オールドマンのような独特の雰囲気を持つ人のことを意味することもあります。つまり様々な言語が存在するこの世界では、美しさというものを言語化することはできないのではないでしょうか。時間経過によって表情にも性質にも味の出る素材である革と、味のある男に欠かせない眼鏡というアイテムによって、「アジがある」ということを表現しました。

担当教員によるコメント

徹底して試作品を作って、形や加工方法を探す。吉川駿くんの作品制作のアプローチは、従来のモノにあった先入観を壊しながらも、多くの人々の共感を得られる取り組み方だろう。卒業制作『Aji』でも、革素材を使って、実際に数多くのトライアルモデルを作りながら、メガネの形や構造を決めていったプロセスが見て取れる。またメガネというアイテムを作り方から見直すことで、部品点数を減らすこともできている。制作時のイメージソースを、丁寧にビジュアル化させて資料にまとめながら進める吉川くんの姿勢も、周りの高い評価を得るポイントとなっている。革の端材利用の可能性まで含め、この先の展開が大いに期待できる提案である。

准教授・濱田 芳治