MOLDED PULP〜紙の領域を拡げる〜

KIM Jimin

作者によるコメント

ペーパーモールドという成型方法を利用し、紙の新しい特性を生み出す研究を行いました。この研究は、紙の繊維に化学薬品の代わりとして砂糖や塩、ゼラチン、澱粉などの身近に存在する素材を混ぜることから始まり、それぞれの組み合わせによる硬さ、弾力、耐久性、触感などの変化を実験したものです。またこれらの結果を元に、従来紙以外の素材が使われていた領域を紙に置き換えていくことで紙が持つ新しいプロダクトへの可能性を探りました。

担当教員によるコメント

キム・ジミンさんの作品「MOLDED PULP」は、従来の紙の印象、できることの範囲を大きく拡げた提案となっている。支えているのは、実験を繰り返してデータを取りながらつくり込んでいく姿勢にある。ペーパーモールドという技法そのものは、卵のパッケージにも利用されるぐらい一般化しているが、そこで用いる粉砕した紙素材に、砂糖、塩などの身近にあるものを加えることで性質を変え、新しさを創り出している。また、異なる色調の紙をモールドする時点でパッチワーク的に組み込んで色変化を作るというアプローチも、実際に作って試しながら技法の可能性を探していったから気づけたことだろう。こうした技法研究で得たプロセスは、今後デザインをしていく際、大いに役立つだろう。

准教授・濱田 芳治