slack chair, 柔らかな座り心地と安定感を, アフォードする椅子

鈴川 弘幸

作者によるコメント

人が食品の味を決定するプロセスの中で、視覚から得る情報は味覚と同等と言われています。そこで前期では視覚情報の一つである食品の形状に着目し、研究を行いました。卒業制作では、前期の研究で得た観点を応用した椅子を製作しました。食品は、人が好んで体内に取り入れる、非常に人との親和性が高い物です。この形状を応用することで、プロダクトの親和性を高め、柔らかな座り心地をアフォード出来るのではないかと考えました。

担当教員によるコメント

椅子のデザイン、また家具デザインではそのアイテムが持つ機能、またはインテリアテイスト等に適合させる事で創造される事が多いが、本作品は椅子自体が視覚情報として発する“安心感”という印象を、食品が持つ“親和性”を応用した造形記号により表現した事に最大の魅力がある。豆腐や餅等が地球上の重力下で持つ柔らかく優しい形状、そのたおやかなアール形状とハリは椅子に応用した場合、視覚的に心地よい座り心地を印象づける。前述の造形をクッション材の扱いに応用すると同様に、全体フレーム、背部や袖部の形状にもバランス良く表現している。視覚情報としてデザイン対象がどのような印象を発信することが人に優しいのか、またその印象を何から導き出すのかを真摯に研究した結果である。

教授・中田 希佳