卒業制作優秀作品集2014
生産デザイン学科プロダクトデザイン専攻
松尾 亜門
廃材である床革の活用と造形表現の可能性
技法・素材:革
靴作りの行程で、革を削る作業があります。その削られた革の粉に着目しました。革の粉は廃材になり処分されますが、粗く削られた革の粉は短い繊維が残っていることを発見し、靴職人の方から粉を頂いて制作しました。紙漉やモールディングの技法を使うことによって、新しい素材の印象を作り上げ、3次曲面の造形表現が可能になります。また、生活の中に気軽に取り入れる存在でありたいと考え、床革の文房具を制作しました。
担当教員によるコメント
人々がある素材を見たときに抱く期待。革らしさとはどんなものだろう。松尾君の最初の発案は、純粋に人々の素材感への期待を形成するものへの興味だったに違いない。しかし探求の過程で見えてきた「廃棄」される部分で素材の持ち味を表現するというテーマにたどり着いた。最後の最後、廃棄されるだけの「削りかす(革の粉)」にデザインの余地を見出そうというのだ。短い繊維の残る革の粉は紙漉の要領で水だけで絡ませシート状にでき、十分な強度もある。革でありながら、自在にかたちを変えることができ、見たことのない不思議な印象を放つ。「革の粉」の素材としての特徴を十分に活かした作品はデザイナーとしての挑戦であり、素材感とは何かという根本的な問いを見る者に突きつけてくる。
准教授・大橋 由三子