育む衣服

松岡 由恵

作者によるコメント

近年、子供たちの工作離れが叫ばれており、物を作ることは図工の授業の中だけにとどまってしまいがちです。そこで、子供の頃から「作って使う」ことを「衣」という生活の場面に取り入れられないか、制作を通して可能性を探りました。1から服をつくるのではなく、あらかじめ形のあるものに手を加える方法であれば、子供も服を作ることが可能であると考え、加工されることを前提とした服を制作しました。

担当教員によるコメント

道具を使い、何かを作ることをしない子供達が増えている。普段の生活では道具を使って家の中のものの修繕をするような家庭も少なくなっているので無理もないが、子供たちが自分の手で作るという体験は単に感性を磨くのではなく目的をもって自分でものごとを推進する力や、問題に突き当たったときにもなげ出さず解決策を考える力を育む。松岡さんの提案は、現代の暮らしにふさわしいものづくり体験の機会を「衣服」のシーンで実現させようというものだ。育むためのインターフェースデザインが巧みに表現されたベースとなる衣服をもとに、子供達は自分の意思で目的にあわせて作り自分で使う。ものと人との自然な関係から暮らしの情景をつくりだす優れたデザインである。

准教授・大橋 由三子