門出

永林 香穂

担当教員によるコメント

塑造としてはオーソドックスすぎる程の作品である。学部時代、作者は一貫して自己と家族をモデルとした作品を制作してきた。技術的にはほどほどの力量の学生であったが、いまひとつ、単なる自己愛から抜けきれないモノであったと思う。この作品もこれまでの作品の延長上にあり、初めに書いたように、何の変哲も無い具象のように見えるだろう。しかしながら、この作品は、以前の単なるモデリングのみの表面処理的な退屈さから抜け出して、フォルムの明快な捉え方、形態表現の無駄のない簡潔さが見て取れるようになった。具象表現にあって、容易そうでも越えられない壁を乗り越えた作品と言えると思う。

教授・黒川 晃彦