織り成す 縫い纏める

本多 由佳理

担当教員によるコメント

刺繍は、基盤となる布地に糸と針で自由に装飾を施すことができる技術といえる。本多さんは、その加飾効果よりも、糸が布の裏表を行き来する運動・針を持つ手の軌跡・繰り返しの集積そのものに注目していたと思う。織を“素材が組み合わされ表情を生み出す技法”、縫いを“要素をつなぎまとめる技法”と定義し、その関係から独自の有機的な形を生み出すことに成功した。経糸と緯糸が直角に交錯し織り出される面を、サプリメンタルの第3の糸が垂直にループとなって埋めていく。彼女の手縫いがそのループを緩やかにとじまとめ突起状の形をつくる。やがて小さく丁寧な作業が重層的にすべてを覆いつくす時、揺らめく起伏が出現する。本多さんのテキスタイルの解釈が風景になった。

教授・川井 由夏