卒業制作優秀作品集2015芸術学科

菅原 海人

大津絵ブランド考
―反民藝的視点から捉えた大津絵の特異性―

「大津絵」に関する先行研究の多くは柳宗悦の提唱する「民藝美」に多大な影響をうけているものが大半であり、「大津絵の戯画性」及び「江戸時代当時の人々からの評価のあり方」に関してはこれまで目を向けられてこなかった。そこで本論では、戯画的な大津絵の特質及びその変遷を考察し、また浮世絵や寄席芸に引用された大津絵のキャラクター像から当時の大津絵への評価を明らかにすることで、民藝的な視点を用いない、多面的な大津絵の特異性を焙り出したいと考える。

担当教員によるコメント

大津絵は、江戸時代に今の滋賀県の大津でみやげ物として売られた絵画のこと。民芸運動のリーダーだった柳宗悦らが言及する以外には、これまで美術史の中でまともに論じられることはほとんどなかった。みやげ物ゆえ美術としては二級品以下と見られたことが大きかったのだろう。菅原君はその大津絵の個性に注目し、たくさんの実作品の検証を交えながら成り立ちや展開を歴史的な文献等を読み込んで研究。さらには現地に滞在して名残を調べたり、ただ一人継承している大津絵師を取材したりするなど多様な調査を行った。その結果、大津絵の変遷や個性の表出をあぶり出すことに成功。戯画性の分析、キャラクター論への展開などもあり、大津絵の再評価の一端を担う内容の論文となった。

教授・小川 敦生

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