無意識の存在

菅田 奈那

担当教員によるコメント

本来、作品が出来上がる過程はそれぞれであって、一概には決められないが、大きく分けて二通りがあるとすると、一つは計画をしっかり立ててモデルを作り、それに沿って作品を作る方法。もう一つはしっかりとした計画は立てず自分の感性に任せてその都度、考えながら作っていく方法。私自身の制作はその前者の方法で作り、その方が失敗が少ないと学生には指導することが多い。しかし、菅田の制作プロセスは後者の方だ。3年生の自由制作のときから一貫して完成体のなかなか見えない方法で作ることを大事にしてきた。数種類の太さの鉄の丸棒を赤く熱して鍛造し、棒のパーツを朝から晩までひたすら叩いて作る。そして材料と対話しながらパーツを組み合わせて形を選んでいく。ただ自分の感性を頼りにつくるプロセスが菅田にとって一番自然体なのだろう。この卒業作品もブリッジ状の構造体というだけの決め事から徐々に形が明らかになっていった。目指す完成形態がみえないので、指導する方もドキドキわくわく、毎週1回のチェックが楽しみだった。本人は春から大学院に進級とのこと。これからまた2年間の感性の成長が楽しみだ。

非常勤講師・藤田 政利