空の間

永田 貴祥

作者によるコメント

紙に皺をつけ 幾重にも重ねることによって現れる現象を利用し、空間の捉え方の一つとした空間造形。

担当教員によるコメント

紙に皺(しわ)をつけ、幾重にも積み重ねるといった、最も身近な素材と単純作業によって「重力」を可視化しようと試みた作品である。82センチ角の薄い紙は、約3.7メートルまで積層されると、自重によって皺がつぶされ、側面の積層面に上部に向かって自然なグラデーションがみられるようになる。皺がつぶされる際に平面的にのびる(広がる)、82センチ角を垂直に保つために、一枚一枚微妙に寸法を変えている。一見単純なようで、そういった地道な調整が全体の密度をあげている。“強くて安定するもの”とは対極の“弱くて不安定”なものではあるが、人工的な構造を、あえて弱い自然現象からとらえていこうとする思考性は、ここ数年みられるような世界共通の試行であろう。

准教授・米谷 ひろし