空間構造物語

菊地 慶香

作者によるコメント

地球上全ての建築は、重力に逆らっている。いかにして空間を包むか。それこそが建築の命題である。構造が「空間を成立させるためのもの」ではなく、「構造そのものが空間の主役」と捉えたとき、果たしてどのような建築ができるか。舞台は、現在米軍基地のおかれている「横田飛行場」。昭和に入り戦争の色が濃くなる前、ここには製糸工場がたくさんあった。製糸工場の歴史を受け継ぎ、生糸が作られる工程を構造デザインに落とし込んだ。都心の西方約38kmのこの敷地に、首都圏第三空港として、この横田空港の計画を提案する。

担当教員によるコメント

この計画は、東京都福生市にある横田基地に計画された民間空港とその施設である。本計画は、現存する引き込み鉄道線を再生させ、鉄道で空港にアクセスする。この駅からは新設されたコンコースで空港ターミナルまで導かれる。長さを活かしたこの空間は、架構が吊り構造となり、地域の特産であった生糸をイメージさせるリズムを持った空間である。更にこのコンコースを進むと、各離発着がしやすく各々の動線をシンプルにするように三つに分かれたターミナルビルに到着する。ここはやはり養蚕の糸を紡ぐ糸車を連想する円形の平面計画となり、その上部には繭玉を連想させる円形の美しい大架構が掛かっている。土地固有の歴史の読み込みの深さと、これらをデザインに昇華できる架構の美しさ。全体を通して流れる一貫した物語性を含んだ作品である。

教授・田淵 諭