おとなりプール

森田 早喜

作者によるコメント

小学校のプールで毎日を過ごす妖精、春夫。冴えない日々の中、一人の引きこもりがちの女の子に出会います。少しでも彼女を元気づける事は出来ないかな。そんな春夫の想いは、ある日、今までの積み重ねと結びつきます。小さな町の片隅の、小さなラブストーリーです。繊細な心境を表現する為、間合いやカメラアングルにこだわりました。誰かの心をちょっとでも軽くできるものづくりがしたいという気持ちから生まれたお話です。

担当教員によるコメント

淡いトーンで描かれたとても繊細な物語。プールの妖精・春夫が引きこもりがちの少女を元気つけるためにとった秘策とは?作者は登場人物の奇行(おしりスタンプ)を通して人の心をくすぐるようなユーモアやおかしみを描き続けている。それは弱者あるいは敗者に対して、耳元でささやくように勇気づける作者独特の秘策でもあり、エールでもある。奇抜なアングルで切り取られた主人公のユーモラスな所作に、遠景ショットや象徴的なカットを散りばめた作為的な構成こそ作者が目指す演出スタイルだ。本作は夏から冬にかけての季節の移ろいにあわせて両者の交流を描いているが、ラストはほのかに明るい春の到来を予感させる。一見クールな外見ながら、人間に対するやさしさにあふれた逸品である。

准教授・野村 辰寿