東京妖怪

井上 智香子

作者によるコメント

目に見えない恐怖や整理しきれない感情は、知らず知らずのうちに無かったことにしてしまう事がよくあるように思う。しかし、その感情たちは確かにその時存在し、今でも私達の心の奥底に潜んでいるのではないだろうか。私の心の底に潜む彼らも、解放することで何か伝わるものがあるのではないかと考え、この作品を制作した。今まで私が感じた目に見えない感情や恐怖を15の妖怪に置き換え、ストーリーを添えて表現した。

担当教員によるコメント

井上智香子は“美術大学でデザインを学ぶ意味”を本能的に最も理解していた学生だ。デザインに対する明確な立ち位置を持ち、ものごとを深く探求する必要性をわきまえ、自身の思考をパワフルな色やカタチとして提案することを在学中最後まで貫いた姿勢は本当に素晴らしいと思う。その迷いなき誇りは快活な存在をいっそう際立たせていた。今回の濃厚な卒業制作はそんな井上の想い全てが凝縮した正に集大成なのだ。目に見えない個人体験を“妖怪”という目に見えるキャラクターとして登場させた機転、そして点描等による執拗な表現、伝わるコピー、いかした落款、収める桐箱に至るまで、隙がない。いきとどいた神経と情熱の見事な結合である。

教授・澤田 泰廣

  • 作品名
    東京妖怪
  • 作家名
    井上 智香子
  • 作品情報
    技法・素材:イラストレーション/紙、桐箱、ボールペン、Illustrator、Photoshop、デジタル出力
    寸法:桐箱/H696×W1156×D69mm(1点)、平面/H623×W1047mm(15点)
  • 学科・専攻・コース