無題

片江 公紀

担当教員によるコメント

片江公紀の作品は、ひたすら画面を線で覆いつくしたり、ひたすら針金を丸めたり、といった、行為が大事な作風である。といっても、コンセプチュアルな方向ではなく、幼児が公園の砂地に木の枝で線を描くことを発見し、いつまでもその行為に没頭するような、原始的な欲求の方向である。学部初期においての形態を追っていた仕事から、後半には次第に色や物の形が消え、ただただ手を動かし、原点に戻っていくようなストイックな制作を続けてきた。マジメすぎてその地点を見失いそうなところもあったが、納得がいくところまで立ち戻り、そして純粋に描くことを愉しむ絵画に戻って来たようである。絵の具を塗り重ねる抽象絵画でありながら、どこか東洋的で土着的な表情を持つ。

教授・吉澤 美香