Bio-Vide~人と生き物の距離の再考~

山崎 卓馬

作者によるコメント

本提案は、自然との繋がりを強調した作品群です。具体的には、生き物の姿形を残しながら構築したプロダクトです。私たちの身近にある製品には多くの生き物が原材料として使用されています。例えば豚は、食肉だけでなく、口紅や石鹸、ソフトキャンディなどに使用されています。リサーチとして養豚場やと畜場へ伺った時、人と生き物、両者の声や臭い、目つき、迫力に圧倒されました。人と生き物の真剣勝負の関係がそこにありました。今の私たちの生活から遠く離れている、加工される前の生き物が放つ、力強く荘重な趣を製品デザインに残すことが自然であり大切だと考え制作に至りました。

最終アウトプットの特徴は以下の3点です。
1. 生き物の姿形を残している。
2. 作る時期(季節)が明確に決まっている。
3. プロダクトとしての役目を終えると土に還り、次の資源を育てる為の栄養源になる。

担当教員によるコメント

山崎卓馬くんの卒業制作「Bio-Vide」は、単に素材の有効利用の方法を提起しているだけでなく、彼がリサーチで得た見識、とりわけ食肉工場で得た「命の消費」に対する疑問を、提案する作品を通して今一度人々に考えてもらいたいとするスペキュラティブ・デザイン的視点が、根底に組み込まれている。作品に奥深さ、芯のある印象を受けるのは、それが大きな理由だろう。人と生き物の距離に対して問いかけてくる彼の作品の中で、既成の概念を大きく揺らすのは、落ち葉を用いた一連の提案だと思う。紅葉した葉からつくられたきれいな印象がある作品ながらも、それらが朽ちることを前提とする新たな視点があり、大いに思考を触発させられる。時間軸、消費するという行為を人々に意識させる彼のデザイン提案は、Lexus Design Award2016で FINALISTに選出され、社会的にも高い評価を得ている。

准教授・濱田 芳治