the red pochettes

田中 郁江

担当教員によるコメント

田中が手編みした28個の赤いポシェットは、28人の他者に委ねられ、身につけられ、それぞれの日常に入り込む。彼女は、その様子を淡々と追い、第三者としてビデオに記録していく。そこには、確実に存在する、他者との距離が読み取れる。田中が不在のままに行われる、赤いポシェットと28人の共生行動には、奇想天外な展開など起こらない。むしろ、田中は、虚偽の物語性を排除するために、確信犯的に平凡な日常を見据え、そこに表現の起点を探している。これまで、存在の不確実性を問題としてきた田中だが、実体を捉えることが困難な自身を認識しながら、それでも他者の中でコミュニケーションをとり、その関係を可視化しようとする本作は、新たな展開である。清廉な印象の残る知的な作品である。

教授・笠原 恵実子

  • 作品名
    the red pochettes
  • 作家名
    田中 郁江
  • 作品情報
    技法・素材:28個の手編みポシェット、28人によるパフォーマンスを記録した映像、モニター、机、コートハンガー
    寸法:H180×W180×D100cm
  • 学科・専攻・コース