絣着物 ― 朧・螺旋 ―

宮川 沙織

担当教員によるコメント

伝統は、時代の流れと共に新たな価値を生み出しモノの在り方を変えてきている。着物もその一つで、着物を着ることが日常から段々と薄れ、優れた手仕事も着物の衰退と共に忘れ去られようとしている。4年間、織りを学び伝統の優れた織技に魅了され、手技の新たな価値を見直すことを挙げて制作した着物は絣織で、多色使いの繊細でリズミカルなパターンで構成され、若々しい息遣いを感じる上品な美しさを醸しだしている。初めての着尺制作でありながら、細縞、多色、繊細なずらし模様と技術力を要する難しい絣技法への挑戦であったが、丁寧に忍耐強く成し遂げられた力作である。伝統的な手仕事から新たな布づくりへの価値を提案する意義深い作品で、今後の更なる制作を期待する。

教授・橋本 京子