私の作品論

杉本 美友

作者によるコメント

本論は私の書道作品論である。第1章では、私が作品に向き合うルーツと、書家としての志を明らかにし、第2章では高校時代の書道部での活動に焦点を当て、書道を始めた動機や活動の始まり、「書の名宝展」について述べている。第3章では、調和体とその作品について語り、津金隺仙氏の遺墨展のことを言及する。第4章では自身の書の可能性と回帰、多字数の意義などを書いている。

担当教員によるコメント

本論は書家として活動する杉本美友の制作記録であり、自身の作品論である。と同時に、書道史を代表する黄庭堅や黄道周、空海らの作品を臨書することで感得し考察した、杉本独自の書の芸術論としても成立している。白川静に傾倒し、種田山頭火の句をこよなく愛し、自身でも詩作をする杉本は、やがて王羲之を基盤とした筆法で漢字と仮名を書く「調和体」に辿り着く。その過程を瑞々しい感性と的を射るような直裁的で豊かな言葉で述べ、書家として生きる決意表明で論を締めている。美術大学ならではの、作家による優れた卒業論文である。

准教授・木下 京子