現代の日本におけるアウトサイダー・アートと展示・キュレーションの検証

中村 美和

作者によるコメント

近年、美術教育を受けていない者による自発的な表現を指す「アウトサイダー・アート」や「アール・ブリュット」と呼ばれる芸術作品の分野が盛り上がりをみせている。なにがアウトサイダー・アートなのか、その定義が曖昧である中、それらを取り扱う展覧会の姿勢は多様化している。本論は、主に現代の日本におけるアウトサイダー・アートを取り扱った展覧会とそのキュレーションの分析を中心に、現在アウトサイダー・アートに対してどのようなアプローチがあるのか、そしてそれらはなにを提示しているのかを検証するものである。

担当教員によるコメント

一般の美術の中でアウトサイダー・アートをどのように捉えるか。それについてはさまざまな立場があるだろうが、ふつうの美術作品と同様に鑑賞にあたいするものとして考えるのが現時点でのもっとも標準的な考え方であろう。近年この分野の展覧会が多いことは何よりもそれを物語っている。とはいえ、その見せ方、見せられ方について一定の方式があるわけではない。それぞれに固有のものがあるのだ。この辺がいわゆる「美術」とは趣を異にしている。本論文の最大の価値は、筆者自身のみずみずしい感性を通して8件の展覧会をフィールドワークし、みずからのかけがえない言葉を紡いでいるところにある。その着実さには瞠目するしかない。参考図版も楽しい。

教授・本江邦夫

  • 作品名
    現代の日本におけるアウトサイダー・アートと展示・キュレーションの検証
  • 作家名
    中村 美和
  • 学科・専攻・コース