くきのめ

吉田 千恵

作者によるコメント

「装飾性と読みやすさを兼ねた書体」を目標に和文書体を制作しました。仮名、漢字、約物、合計3185文字あります。細く柔らかな線を「茎」、ちょこんとしたアクセントを「芽」、そして一番の出来だと思った平仮名の「の」を合わせて「くきのめ」と名付けました。小さめな作りで、組むと字と字の間に空間ができて軽やかな印象です。また書体を発表するために字典、組見本、制作記を作りました。

担当教員によるコメント

吉田千恵さんが制作した本文用書体「くきのめ」は、伝統に裏打ちされた骨格と、注意深くデザインされた可憐で抑制の効いたディティールの組み合わせにより、本文用書体としての読みやすさと、みずみずしい感性に彩られたオリジナリティを両立させた大変格調の高い作品です。3,000字を超える制作字数は、日本語の文章に新たな形を与えるためにどうしても必要な数でした。それはまた、彼女の構想力、真摯さ、仕事の精度の証でもあります。自らデザインした書体を駆使して制作された「字典」「制作記」「組見本」は、書体デザインに留まらない吉田さんの感性の大きさと人柄を伝えるとともに、タイポグラフィとは何か?という尽きることのない問いかけへのひとつの回答にもなっています。

講師・佐賀 一郎

  • 作品名
    くきのめ
  • 作家名
    吉田 千恵
  • 作品情報
    タイポグラフィ
    技法・素材:タイポグラフィ=紙、鉛筆、Glyphs
    /本=紙、糸、接着剤、布、InDesign、デジタル出力
    サイズ:字典=H260×W186×D67mm (1点)/制作記=H210×W148×D10mm (1点)/組見本=H180×W171×D3mm (7点)
  • 学科・専攻・コース