新立体主義

穴井 早紀

作者によるコメント

この本は、視点によって写実とキュビズムの図像が現れます。私たちが見ているものごとは、そのほんの一部でしょう。空間の中の、ある一点でしか形態を認識することが出来ないように、その一部すらも何らかの環境によって形成されたものにすぎません。私たちは今、どこを見ているのか。本当の姿とは何か。動作によって多角的な視点を誘発することで、ものごとの本質と自らの視点を問います。

担当教員によるコメント

メディアにこれまでにない形を与えると、人の興味をかき立てます。穴井さんは立体的にすることを超えて、新しい視点の提示にも成功しています。手に持てる宝石の輝きのような本、モノとしての完成度の高さは、デジタル書籍の対局にあるものです。ある意味では、これはまさに本であると思います。紙の切り込みの美しさは秀逸ですし、その抽象性な紙の切り込みと、顔という極めて具体的なモチーフとの新たな関係性、顔の表情に特化してまとめたこと。ひとりの中のふたつの表情の間の時間が、見事に作品化されています。しかも、このアイデアの実現に終わらず、一冊一冊にウィットのある言葉が添えられ、考えさせられます。作者から読者に投げかけられたクイズのようです。制作途中の教室で、紙を切って試行錯誤していた姿が記憶に残っています。

教授・山形 季央

  • 作品名
    新立体主義
  • 作家名
    穴井 早紀
  • 作品情報
    ブックデザイン
    技法・素材:本=紙、Photoshop、Illustrator、デジタル出力
    サイズ:本=H264 × W192×D8mm (26点)/本箱=H275 × W202×D255mm (1点)
  • 学科・専攻・コース