かくかく鹿々, 〜鹿が伝える有害鳥獣駆除のこと〜

小股 由莉子

作者によるコメント

有害鳥獣駆除として駆除された鹿から、有害鳥獣駆除の現状について伝える作品です。有害鳥獣駆除とは、人間社会の便利さと引き換えに、鹿や猪などの鳥獣が農林業に被害を及ぼすまでに増えてしまったため、個体数を減らすために行われる狩猟のことです。私は、ある猟師さんとの出会いをきっかけに実際に狩猟へ行き、被害に苦しむ農家の方や鳥獣を駆除する猟師さんの想いを聞いて、有害鳥獣駆除の現状について伝えていきたいと考えました。そこで駆除された鹿の皮を自分でなめし、毛皮、本、バッグの異なるアプローチで伝える作品を制作しました。

担当教員によるコメント

作者の小股由莉子は初めは「食」について調査研究を進めた。縄文時代から現代にいたるまでの日本の食に関する研究は、それを纏めるだけでも卒業制作として十分な量と高い質だった。その研究で小股は家畜以外の狩猟による食の文化に興味を持つ。まずは実際にジビエ料理の店に行き食べる事から経験する。その店の主人が猟師である事を知り狩猟の話を詳細に聞く。そして狩猟の現場に同行し普段は捨てられる鹿の皮をもらい、鹿の皮を自身の手で鞣す。作品に使用されている鹿の皮はすべて小股が鞣したものである。その類い稀なる行動力と探究心。なぜこの鹿が殺されなければならなかったのか、有害鳥獣駆除と現実と人の関わりを伝えるこの作品の迫力は、作者のそのような実体験に由来している。

教授・宮崎 光弘