言葉なき人々

佐藤 正美

担当教員によるコメント

かつては、祖父母に自分を重ね合わせる作品が多かったが、この頃の対象は父母、それも母との確執が増えた。作者は母を愛しながら、それを伝えらず撮影することすらできない。そんな切なさがじっと波を見つめる。自転車を漕ぎながらカメラを廻し、急な川を上りながらカメラを廻し、自ら迷子になっていく、その独特の息づかいが素晴らしい。一見でたらめに見えるカメラワークは、自らの身体そのものから発するように、変哲のない風景や人物とひとつになっていく。しかし、母親は“撮れない”のだ。だからこの真似のできないカメラワークが身に付くのだというジレンマ。次を見たい一人だ。

教授・ほしのあきら