伝統工芸技法を応用したCMFの家電シリーズ

松永 春香

作者によるコメント

物足りなく感じていたプラスチッキーな工業製品に素材感を出すコーティングをしたいと考えました。人を美しくする家電をときめくものにしたいと始めたのが“特別感を与える”ことです。ここでの特別感とは工芸品のように“同じ物が世の中に無い”ことです。成形されたままのプラスチックは工程が少なく安価なものですが、自分を綺麗にしてくれる道具たちには、“特別感を与えてくれるもの”であって欲しいものでしょう。焼き物の中からお気に入りを探すような、使い込んだ漆器が味を出すような、直してでも使い続けたい、そんな特別感を与える道具にしたいと考えました。

担当教員によるコメント

寸分違わない姿(外形、表面処理等)で量産を行うというプロダクトデザインの根底概念に一石を投じる作品である。昨今の分野拡大が目覚ましい理美容家電に対し、エンドユーザーが使用時に感じるモノへの価値観や愛着心をCMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)視点からリビルドした提案である。プラスチッキーな安っぽさを払拭する為に、伝統工芸技法を広範囲に研究し、そこからの試作化は他を圧倒する質と量、高い製品実現性を感じさせるものであり、本作品はその結果である。各々の技法から “研磨” “溜まり” “滲み”というノンコントロールであるからこそのオリジナリティ創出は、今後の樹脂製プロダクトのコーティングスタイルを変革に導くトリガーになると確信する。

教授・中田 希佳