刻む/inscribe

登里 萌

担当教員によるコメント

展覧会場で展示された作品は驚きをもって眺められた。作品を目の前にすると誰しもが魅入られてしまうのだ。自分を1本の木に例え、白絹布に白絹糸を1針1針刺していった手刺繍による5点の連作。その木々は白色だけなのに、絹が反射して独特な輝きを発光し不思議な表情を表す。かつて日本の絹が世界を驚かせたように「刻む」に出会った鑑賞者達を再び驚かすだろう。この時代、手に代われる道具もあるが、あえて自らの触覚と視覚を研ぎ澄ませながら向き合う事の大切さを教えられた作品と言える。

教授・弥永 保子