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福川原 季里

担当教員によるコメント

なかなか入る事の出来ないこの部屋は時空の隙間であろうか。作者の豊かな色彩感覚や独創的なドローイングの世界が動きだし新たな魅力を持ってパフォーマンスへと発展した。テキスタイル・衣服・ダンスが響き合う詩的で美しい作品である。ダンサーが纏う衣服の色彩は臈纈染めで染められた。白く残したい部分に蝋を塗り周りを染め重ねていくというその工程は、作者の言う『時間とともに塗り重ねられた白』を逆説的に表現しているかの様にも感じられる。染めた布には白い布が重ねられダンサーが静止した状態では色が僅かしか見えない様になっている。動き出すと赤青緑の強い色彩が風を孕み真っ白な空間に新しい時間を吹き込む。テキスタイルによる表現の力強さを改めて感じさせられる作品である。

准教授・吉川 真由