灯芯座第一回公演「青行燈」告知ポスター

川上 翔大

作者によるコメント

近世以前の怪談・奇談をテーマに制作したポスター
グラフィックデザインは今日まで商業と深く結びつき、その要請から、知的さ、愛らしさ、可笑しさ、といった表現に秀で、明瞭で理知的な表現が主流となってきました。今回の制作では、グラフィック表現に、不穏さ、不明瞭さ、怖さを持ち込み、こういった負の感情を用いて、人を惹きつけ、ビジュアルコミュニケーションをとる事ができるか試そうと考えました。

担当教員によるコメント

この作品で彼が課題にしていること、つまり「デザインに何ができるか」を思考しているのが良い点です。劇団の公演ポスターという体裁は、そのための計画として提案されました。演目としての怪談・奇談について、原文を読み込み、必要なモチーフを探し出して、見る人に話の要諦が伝わるか検討を重ね、何度もつくり直していたのが印象的でした。ビジュアルについて、曖昧な形と色で各々のテーマを表現しようと粘っていましたが、最も苦労したのは文字情報の入り方でしょう。言葉の意味以上に感覚を伝えたい今回のような場合、書体・文字組・レイアウトをどうするか、毎回工夫を重ねて、ラフスケッチでなく各ポスターを仕上げた状態で見せてくれました。でき上がった枚数の多さではなく、その真摯さと熱意に打たれました。

教授・山形 季央