東海道五十三次へなちょこの書

齋藤 健介

作者によるコメント

自分のやりたい事をやった巻物
僕がやりたかったことは吟遊詩人になることでした。そんな突拍子もない発想から、何が出来て何をやりたいかと考えた時に頭に浮かんだのは詩でした。大学に入学し周りの凄さに圧倒され、そんな中で出来る唯一の表現はこれ以外思いつきませんでした。自分の詩を活かすためにどこを巡れば良いかを教授と相談し、53次に決定しました。現代を生きる自分の視点から出た言葉と、過去のメディアである巻物との融合を目指し、この巻物が出来上がりました。

担当教員によるコメント

自分の素直な詩をデザインに使うことは、すでに3年生の頃から始めていました。彼の詩には、場所に対する諷刺力があるので、浮世絵の絵師が行ったように、誰もが知っている東海道の各宿場を題材にすると、作品を見る人と作者の間に共感がわくだろうという話をしたところ、「今から行ってきます」とすぐに動きだしました。そして、東京からはじめて京都まで一駅ずつ下車して、歩きながら詩を書き、写真を撮影し、それを繰り返しました。膨大な量の写真と縦組の詩をまとめるには、巻物がふさわしいと話していると、立派な仕上りの巻物にしてくれました。まだ写真の構図は広重ほどではなく、詩は芭蕉ほどではありませんが、いつか追いつくことができると思います。この作品の良いところは、行動力の成果物である点です。

教授・山形 季央