包むことわり

井原 優香

作者によるコメント

人には見えない気持ちを「かたち」として表す「包む」という行動に、「人生」という一つの軸を与え、人生における10の節目に対する包みを考えました。それらの包みを構成する素材、色、包み方には、節目によってさまざまな意味が込められています。これらにより、包むことの多様性や背景などの内面的な部分を含んだ「かたち」を伝えることで、包む理(ことわり)、つまり、包むことの筋道や理由を見せることを目的としています。

担当教員によるコメント

作者の井原優香は、洋菓子店で贈り物として数多くのお菓子の箱を包むアルバイトをしていた。箱を綺麗に包むには習熟が必要で、それができるようになると包む側も受け取る側も気持ちがいい。井原が「包むこと」による人の気持ちの動きを卒業研究制作のテーマに選んだのは、そのような彼女自身の「手」による経験がもとになっている。そこから井原は「包むこと」を深く追求した。語源、歴史、しきたり、用紙、方法、所作など「包むこと」について調べ上げ、人生の10の節目の「包み」を考案する。それは、いわば「頭」で作る行為だった。そして、またそれを「手」で何度も包み少しずつ改良する。作品として完成した包みや映像は、井原が「頭で作り、手で考える」を幾度となく繰り返した成果である。

教授・宮崎 光弘