day to day つづけること、日々の積もり

梶 みのり

作者によるコメント

何かを始めること。そして、つづけること。そんな経験は、振り返るといつも曖昧です。昔はできなかったこと。昔は、できたこと。私は、記録を詳細にとりいくつかの媒体に落とし込むことで、「過程」を観察することを試みました。選んだモチーフはパン作りでした。生地をこねる、寝かせる、焼く。それを100回繰り返したとき、初めと何が変わるのか、どう変わっていったのか。少しずつ九九を覚えたことのような、何度も逆上がりの練習をしたことのような、日々に訪れる、ほんの些細な上達過程を辿る作品になりました。

担当教員によるコメント

梶みのりは早い段階で「私は卒制でパンを焼きます」と宣言した。「パンを焼く」といっても焼かれたパンが作品となるわけではない。梶自身が日々「パンを焼く」行為の過程を丁寧に観察し、記録した情報を纏めることで、卒業研究制作にしようと決めていたのだ。その時点では具体的にどんな作品になるかも分からなかった。ただ、この作品は今までにない面白い卒制になるだろうと予想できた。なぜなら方法自体がとても新しく面白かったからだ。最終的には、映像、写真、文章、インスタレーションと複数のメディアを組み合わせた作品となり、そのすべての質がとても高かった。中でも日常の過程を記録したエッセイは、読む者が自然と共感してしまう不思議な力を持ち合わせていて素晴らしかった。

教授・宮崎 光弘