多面的視点による地図の研究

鈴木 崇也

作者によるコメント

一般的にメルカトル図法は北極および南極を極として地図が描かれますが、その軸をずらして極の位置を移動させることで、描かれる地図の形状に変化が生まれます。その生じた変化は、地図に様々なデータをプロットすることで顕著なものになります。多いと思っていたものが少なく見えたり、広範囲のものと思っていたものが意外と狭い範囲に見えたりと、地図情報の相対性を感じることができます。この作品は、そんな歪んだ地図が情報の伝達に及ぼす効能を体感するものです。

担当教員によるコメント

世界はその見方で大きく姿を変える。わかっていることではあるが、日常において人びとは見慣れた方法だけでさまざまな判断を下している。この作品は、メルカトル図法で描かれた世界地図の極点を移動させることで、その地図にプロットされた情報を多視点で読み取ることができるウェブアプリケーションである。たとえば、世界中の飛行場をプロットした地図の極点を北極点から東京に変えてやるだけで、その分布の見え方から違った意味を読み取ることができる。このアプリでは、利用者が極移動させた地図情報を登録・公開することができ、ほかの人の視点を辿って自分では思いつかない見方を発見することもできる。本作は単なる多視点をもつ地図情報にとどまらず、一歩進んだ「理解のデザイン」を提案している。

教授・永原 康史