或る車窓

鈴木 智美

作者によるコメント

往復五時間の電車通学を送る中で「電車の窓の大きさやガラスの透明感が羊羹のように見えた」という経験から、これまで眺めてきた車窓の風景から印象深いものを意匠として制作した錦玉羹。建造物を再現する等の工程で必要な型造りには3Dプリンタを用いている。また、人工的な風景を「自然」と感じる自身の感覚を表現することが和菓子文化の拡張へと繋がることを願う。

担当教員によるコメント

風景を、食べられる和菓子にした作品。谷崎潤一郎が、『陰影礼賛』で書いた、和菓子をメディアにして、作者が電車で移動する時に見た風景が描かれている。和菓子独特の色合いや、光沢を駆使して、自己の心象風景が、食べれば、消えてなくなってしまう物質として、結晶化している。華奢で、清楚なこの趣きは、見る者、食べるものに、強い印象を結ぶ。

准教授・佐々木 成明