卒業制作優秀作品集2018
芸術学科

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入月 みな

ローレンス・アルマ=タデマの作品に見る時代性

本論文は、イギリスの画家ローレンス・アルマ=タデマの作品における時代性について考察したものである。彼の作品は古典古代を多く描いているという特徴がある。そこには生まれ育った芸術的風土や当時の流行の影響があるをと考え、どのような点でその影響が見られるのかを調べた。具体的には、まず彼の生涯、彼の育った地であるオランダ・ベルギーの芸術風土など時代背景を概観した後、写真やジャポニズムなど当時の流行が作品の特に構図に及ぼした影響についてみていく。

担当教員によるコメント

ローレンス・アルマ=タデマ(1836-1912)はオランダ生まれのイギリス、ヴィクトリア朝の画家。古代ローマ、ギリシア、エジプトの歴史に題材を採り、それらを臨場感あふれる写実的な筆致で描き人気を博した。入月論文が非凡なのは、ここに単なる異国趣味、懐古趣味を見るのではなく、画家が生きている時代との同時性を看破したことである。こうすることで、「その作品から当時の流行、遡っては美術史の一潮流、はたまたイギリスとオランダ、日本と古典古代の不思議な結びつきを見ることのできる稀有な画家」(p.23)との再評価が可能となった。「日本」とあるのはジャポニスムのことで、浮世絵の構図との比較はなかなか示唆的である。

教授・本江 邦夫

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