ひらがな空間

吉山 理沙

作者によるコメント

これは、ひらがなを書く際に生じる身体的感覚を視覚化した文字です。筆圧、筆運び、余白、スピード。これらは字を書くときに誰もが無意識に感じている感覚です。この4つの感覚だけを抽出することで、ひらがなに潜んでいた目には見えない文字たちが表れました。この文字は「見えないけれど確かに存在する文字」なので、文字にはインクを載せずに制作しました。

担当教員によるコメント

ひらがなのフォルムは、右回りの螺旋運動を基本としており、優美で可憐で、書き手の息づかいをストレートに反映する動的なものです。吉山理沙さんは、ひらがなを書く行為が生みだす4つの次元──筆圧・筆運び・余白・スピードに注目し、そのそれぞれを光として示すことで、ひらがなの一瞬の美しさを画面に定着しました。吉山さんの作品は、普段、書かれてしまったひらがなを見慣れた私たちに、行為としてのひらがなが備える美しさを、息を呑むような美しさで教えてくれています。誰もが見慣れた存在から、誰も見たことのなかった美しさを引き出すその着想、そして着想から表現を引き出す理にかなった手法は、吉山さんの非凡さと主題に向きあいつづけた真摯さを物語っています。

准教授・佐賀 一郎

  • 作品名
    ひらがな空間
  • 作家名
    吉山 理沙
  • 作品情報
    タイポグラフィ
    技法・素材:紙、Illustrator、Photoshop、デジタル出力
    サイズ:ポスター=H1030×W728mm(4点)/冊子=H250×W260×D5mm(46点)
  • 学科・専攻・コース