谷崎文学から見る「耽美さ」の探求

堀尾 七海

作者によるコメント

近代日本文学を代表する小説家のひとりとして名高い、谷崎潤一郎の文学作品を読み解いて、物語の流れを視覚化し、それらを比較することにより、谷崎文学における「耽美さ」を探求しました。

担当教員によるコメント

男女の関係をフェティッシュな描写で綴る、文豪・谷崎潤一郎特有の「耽美」な世界。作者が強い魅力を感じていたこの「耽美さ」の構造を探るために登場人物の心象風景の視覚化をおこなった。「刺青」「春琴抄」「秘密」を題材に、登場人物の心理状態を様々な視覚記号に置き換え、それらを時間軸上に構成することで3作品の構造的な相似性と差異を明らかにした。さらにこれらをシーンごとに細分化し、装画として再構成した書物を制作。二分空きの本文組や樹皮のような表紙、和紙・袋とじによる軽くてしなやかな造本は、著者自装で知られる「春琴抄」の分析と谷崎自身の装丁に関する言及を調査して得た着想である。主観的な解釈が色濃い視覚表現が、客観的な分析によって設計された造本と組み合わさることで、谷崎文学の「新しい読み方」を提示する妖しくも美しい書物が完成した。

講師・中野 豪雄

  • 作品名
    谷崎文学から見る「耽美さ」の探求
  • 作家名
    堀尾 七海
  • 作品情報
    和綴じ本
    技法・素材:表紙=大高檀紙/見返し=雲龍紙/本文用紙=やわらがみ 和本用紙/箱=檀紙、ニューウエブロンカラー
    サイズ:H190×W130mm
  • 学科・専攻・コース