愛の風, skins / sky

磯﨑 隼士

担当教員によるコメント

表面ではなく、薄い何かに覆われたその下にあるもの。いや、そこにあるのは求めてもたどり着けない不在という事実なのか。あるいはその空虚さを埋めるためにその何かはあるのだろうか。シリコンゴムに彫り込まれた図柄は、作者が出会った人々の記憶の断片であり、また、生まれ育った土地のにおいそのものでもあるのだろう。壁に木材とバイスで暴力的に取り付けられ、普通であれば痛々しくも見えるはずのものが、その記憶に誇張も偽りもなく、それぞれを慈しむように丁寧な手技で作られたそれらによって、清澄さとともに不在の正当性を伝えている。もう一点の作品も、一見無造作で粗野なインスタレーションの印象を与えるが、様々な形体がそれぞれの皮膚(あるいは記憶)をまとい、あらたな物語の生成を感じさせる好作品であると思う。

教授・小泉 俊己

  • 作品名
    愛の風, skins / sky
  • 作家名
    磯﨑 隼士
  • 作品情報
    『愛の風 』
    素材・技法:樹脂、木
    サイズ:H100×W170×D200cm

    『skins / sky 』
    素材・技法:樹脂、木
    サイズ:H170×W100×D30cm
  • 学科・専攻・コース