音に実体性と空間性を還元する

本村 祐貴

作者によるコメント

蓄音機に始まる音の技術の変遷の中、実体や空間を失った音が徐々に存在するようになりました。今日私たちは、むしろ実体のない擬似的な音の方が多く耳に入る環境の中にいます。そして、聴覚が本来認知していた空間や実体を伴った繊細な情報が失われていることに、もはや私たちは疑問を抱かなくなっています。このプロジェクトは、そういった音とは対照な存在を提示することで、そもそも音とは何か、聴覚は何を感じているのか、今日の音は何を失い何を得たのか、色々な思考を引き出すことを目指しました。

担当教員によるコメント

科学の原理から思考を始め、それを視覚化、実体化させる。本村祐貴くんのこの制作アプローチは、数多くの実験的試作を通して至った解であり、とても興味深い。ブラックボックスの多い時代、原理や仕組みの「なぜ?」「どうして?」の理解なしに、我々は多くのモノを享受し、日々暮らしている。しかし例えば音を聴くという行為を取り上げてみても、人の欲求は「音が耳から聞こえればそれでいい」としているのだろうか?物事を感じ取る力、感受性はもっと身体全体からもたらされる感覚だろう。当たり前のこととして受入れている現象にも、知らないことがまだまだある。本村くんの『phonotomy』の作品体験を通じて、我々は如何に知らないのかを改めて認識させられる、そうした観点を大いに含む提案だろう。

准教授・濱田 芳治

  • 作品名
    音に実体性と空間性を還元する
  • 作家名
    本村 祐貴
  • 作品情報
    技法・素材:鉄、発泡ウレタン、木材、トタン、フェルト、真鍮、Logic Pro
    作品形態:インスタレーション
  • 学科・専攻・コース