OUTER SPACE

担当教員によるコメント

一人称視点（ファーストパーソンビュー）や、三人称視点（サードパーソンビュー）といった、ビデオゲームにおける視点の問題を扱った作品だ。一人称視点にくらべ、後方から鳥瞰的にキャラクターを見つめる三人称視点は、誰の視線なのかは不明瞭なまま、透明なものとしてビデオゲームの中にしばしば存在している。作者は、この透明な三人称視点に注目し、コントローラーの操作によって左右に回転する液晶ディスプレイと、上下に移動するカメラによってそれを現実の空間の中で実体化した。それによって、透明な存在だった三人称視点の存在は、現実の空間の中で、重さや剛性を持ち、物理法則に従う存在となり、ビデオゲーム内の物理法則によって動くキャラクターと同じように、三人称視点のカメラは鑑賞者のもう一つのアヴァターとして存在し始めるのだ。そして、ビデオゲーム内のキャラクターと現実のカメラを同時の操作するとき、鑑賞者の主体は二つに引き裂かれていってしまう。そこに、抑圧された三人称視点への、作者の批評的な眼差しが感じられる優れた作品だ。

講師・谷口 暁彦