しっくりくる絵の向き
鈴木 成紀
作者によるコメント
鑑賞者は、これらの絵を特定の向きで見たとき、他の向きで見ているときとは違う、しっくりくるというような安定感を感じます。これらの絵を認識する時、私たちに蓄積されている、視覚的経験と身体感覚の経験が感覚に働きかけてくるのです。
私たちが経験する空間は、地面で閉じられた半球状の形の中で、重力の働きがあり、頭上に太陽が昇り、光が降り注いでいる。私たちの経験には、そのような環境が作り出す方向性の仕組みが付随しています。
本展示では、絵に特定の方向性を与える要因として、主に重力と光源を提示し、それぞれ絵に現れる事象の表現として分類しています。
担当教員によるコメント
鈴木成紀は、私たちが無意識の内に情報を解釈し世界を構築している秩序を疑っている。それは、人類に刻み込まれた環境情報に対する経験の集積を、丁寧に一つずつ紐解いていく地道な作業だ。今回は「重力」と「光」という、この惑星に生きる生物全てがその影響から逃れられない存在を取り上げ、体験者が自らその秩序の存在に気づけるよう、美しさと心地良さを伴う体験として提示した。ただ研究した事実を提示するということではない形で、世界に対する解像度を上げていくその試みは、あくまで表現者の側から世界認識の原理にアプローチし続ける、鈴木の独特なまなざしが現れている。
教授・中村 勇吾、講師・菅 俊一
- 作品名しっくりくる絵の向き
- 作家名鈴木 成紀
- 作品情報インタラクションデザイン
技法・素材:木材、紙、塗料、金具
サイズ:W3500×H900×D900mm(1点) - 学科・専攻・コース
- カテゴリー