COCOON

中山 媛南子

作者によるコメント

勉強するときも仕事をするときも、我々はその机に適切な高さの椅子に座って、下を向きながら作業をこなしてきた。目線を下げて机に向かう姿勢には、『集中して頑張るとき』の景色が見えている。すなわち、小さな頃から、その姿勢・その目線には、頭のスイッチをオンにするように刷り込まれていると考察した。

真のリラックスタイムを満喫するために、この椅子を提案する。
座面高16cmからの景色は、床に座ったときと近い。加えて15度の傾きに身を委ねると、自ずと目線は上方に向かうだろう。デスクワーク中とは、まったく違う景色が見えるはずだ。床に座るよりは高く、一般的なダイニングチェアよりはずっと低い。床に座るだけでは得られないくつろぎと、床に近いことによる安心感がある。体ごと回転したり、あぐらをかいたり、座り方も自由である。
窓辺に置けばきっと美しい空が見えるだろう。ゆるい太陽の光を感じながら眠るような、豊かでだらしない時間を、この椅子といっしょにすごしてほしい。

担当教員によるコメント

「上を向いて座りたい」…この想いがコンセプトとなり、様々なリサーチ、いくつものスケッチ、スケールモック、プロトタイプでの検証を経て、型の制作からFRP成型までやり遂げた。この作品は、そのプロセスも相まって、まさに卒業制作にふさわしい力量を感じる。出来上がった椅子は、タイトル通り繭のように柔らかで心地よく、十分に練り込まれた絶妙な寸法値と共に、座った者の心も体も自然に上を向かせてくれる、そんな素敵なデザインに仕上がっている。

教授・米山 貴久、非常勤講師・米田 充彦