「光」の表象空間 ハギアソフィア, 図像学・建築学から読み解く二つの宗教の祈りの場

増田 有為

作者によるコメント

現在までおおよそ1500年の間に、キリスト教とイスラム教の二つの宗教の祈りの場を経た建造物、ハギアソフィア。交易の中心地コンスタンティノープルでさまざまな文化圏の人々をそれは魅了してきた。聖母子像とアッラーの文字が隣り合う空間を実現させたのは、見える「光」と内なる「光」の表象空間であるからだ。「光」への憧れは人間が、時や文化圏を超えて共通して持つ普遍的な感覚である。そのようなハギアソフィアの「光」を図像学、建築学から読み解く。

担当教員によるコメント

イスタンブールでの現地調査を生かし、本論文は、宗教空間において、「信仰と芸術」を結合する、「光」の表現を、キリスト教とイスラム教の二つの宗教の祈りの場を経験した最大の建造物、世界遺産「ハギアソフィア」の1500年の歴史とともに検証した。交易の中心地コンスタンティノープルは、古代からさまざまな文化圏の人々が行き交い、そのビザンティン美術の真骨頂たる「モザイク」芸術が、光を創造した背景はもとより、聖像破壊運動を経ても生き残っていった、聖母子像と、イスラームのアッラーの文字が隣り合う空間の重層性を観察し、そのはざまを縫って貫かれた光が、新旧の時代と宗教的分裂を超えて、「普遍の表象」として実現されていったことを、図像学と建築学から読み解いた。ドーム建築の壮大な空間の細部までを観察し図像と空間の関係に光を当てた論考は、現地調査の経験を存分に生かしたものとして優れている。

教授・鶴岡 真弓

  • 作品名
    「光」の表象空間 ハギアソフィア, 図像学・建築学から読み解く二つの宗教の祈りの場
  • 作家名
    増田 有為
  • 学科・専攻・コース