ネガティ

渡邊 絹花

作者によるコメント

私たちは普段、「人とはこうあらねばならない」という「理想の呪縛」に囚われてはいないでしょうか。それは人や社会をより良い方向に導いてくれる一方で、人間本来の性質を排除してしまう危険性もあると私は考えています。「ネガティブなもの」を強引に排除した人の姿は一見理想的であっても、実際は非常にいびつなものになってしまいます。この作品では、自分自身の「ネガティブな性質」が書かれたピースを選んで、不思議な生き物「ネガティ」を作り、他者と共有することを体験します。ネガティたちは、折り合いをつけて共存していくべき存在。そんな「厄介な自分との付き合い方」や「理想像の押し付け」について考えるきっかけになればと思います。

担当教員によるコメント

この作品は、自分の隠しがちな弱さを、適度な距離感で観察することができる体験をデザインしている。自分の弱さをキーワードで直感的に3点抽出し、カタチを組み合わせオリジナルの生き物を作り、名前と特徴を記し標本にする。自分の闇に生きるモンスターのような存在は、外に取り出してみれば興味深い研究対象に変化するかもしれない。シンプルな見た目で、使い手の属性を定義せず、誰でも違和感なく参加できること
も作者の信念が現れてる。また作者自身が自分の体験をとことん観察した上で、当事者研究の概念を調査し、自分の生み出したい体験と照らし合わせながら解釈して、目的に沿ったビジュアルと情報に再構築したデザインプロセスと態度が何よりの秀逸な点だ。

講師・清水 淳子

  • 作品名
    ネガティ
  • 作家名
    渡邊 絹花
  • 作品情報
    インスタレーション
    技法・素材:紙、シール、ペン、クリアファイル、Illustrator
    サイズ:H3000×W2000×D1000mm
  • 学科・専攻・コース