Deep inside Ⅲ

野中 みなと

担当教員によるコメント

野中みなとさんの「Deep inside Ⅲ」は3点組の1点である。自身で撮影した建物の写真をデジタル加工し、出来るだけミニマムにした世界を作っている。作者の感性により色と形が変化された世界には、一見すると抽象化された世界に見えるが、わずかに残る現実世界を想像する手掛かりが、平面の中に空間を見せ、イメージを広げさせてくれる。画面の中で選び抜かれた形と色の組み合わせにより作り出された世界は、シルクスクリーンで樹脂板の上に刷られたことにより、紙の上に刷られたものとは異なる素材の抵抗感を見る側に与えている。その効果も相まって、彼女のスタイリッシュで鋭敏な感性が生んだ空想世界を見せられているような気持ちになる作品となっている。

准教授・大矢 雅章