群れる

森 航太郎

担当教員によるコメント

餌をもらおうとしているのだろうか。魚達は池の中でひしめき合い、カラフルな色彩が水に溶け込み揺らめいている。和紙にしみ込んだ色の層は互いに浸透し、重なり合うことで深い色調が生まれ、多色木版画のもつ風合いが生かされている作品だ。森航太郎さんは、卒業制作において版画の表現として「層」を意識して制作したという。そのために選んだモチーフが水の層に生きる魚達である。水というフィルター越しに魚が行き交う状況が描かれた画面は、木目と彫り跡とが醸し出す「もの」としてのリアリティを感じさせながらも、奥行きを深く増幅させている。版画がもつ特性のひとつに、その技法や工程自体が階層性を有していることがあるが、作者はこの作品で版の重なりを意識させるとともに、その行為自体を可視化しようとしている。

教授・古谷 博子